実は、「解放人間」という言葉は、この人、浜崎氏に教わったものだったりする。 アルコール抜きで話をするのは片手で足りるくらいの回数しかしかした事のない私達だったが、 相変わらず、浜崎貴司はオモシロイ人物だった。。。 月花 最近、脅迫観念についての小説を読みまして・・・ 浜崎 ほう、脅迫観念大特集? 月花 そう。ミステリ専門書店店主セレクトのオムニバス。 浜崎 で、なんか結論みたいなもんが出たわけ? 月花 結論、てわけじゃないんだけどさ。考えた事はあるよ。 ・・・例えば、ムカついたとすんじゃん?浜ちゃんってモノに当たるヒト? 浜崎 あんまムカつかないからねー、最近。 月花 (笑)私もあんま怒んないんだけどね、モノに当たる人って結構いるじゃん。 浜崎 うん、いるいる。 月花 私、モノに当たらないんだけどね、昔は当たった事もあるけど(笑) 当たると自分が損するじゃん? で、やめたわけ。 浜崎 うん。 月花 でね、当たる人と当たらない人が、それぞれに殺人を犯すとするでしょう? するとさ、無差別殺人的な殺しをやるのは、モノに当たるタイプなんではないかと。 で、当たらないタイプは標的を絞った殺しをするんじゃないかなぁ。。。 だから昔の私は無差別殺人者タイプ、今の私は的を絞って殺すタイプになるんじゃないかと思ったワケ。 浜崎 集中砲火って言うか、目標がはっきりしてるのね。 月花 そうそう。モノに当たる人ってのは、何故無差別殺人かというと、それは責任転嫁であって、 自分以外を責める事によって、自分の否を誤魔化す為の行為でしょ? 所謂、自分が悪いという現実からの逃避であって、脅迫観念と何か同じ匂いがプンプンだと思うのさ。 浜崎 うーん、なるほど。。。 ・・・俺が脅迫観念ってのについて思うのは、 例えば戦争においてさ、まぁほぼ終結してしまった訳なんだけど、あれの経緯とか ゴタゴタについて考えていくと、やっぱ恐怖ってものが根底にあるような気がしてならない。 どちらの側にも、その周囲を取り囲む、どちら側でもない人達の中にも、脅迫観念が見えるよね。 「やられるのが怖い」っていう恐怖は、日常生活においても実は皆の中に在る。 無意識の中にある「死」への恐怖っていうのかな。多かれ少なかれね。 だからこそ、皆生きようとしてる。「そんな事考えてないよ」って言う人も沢山いると思うけどさ。 生まれてしまったって事は、死へと向かっている訳じゃないですか。 だから深層心理の中に、絶対恐怖は存在するよね。日常生活を送る中にも、必ず脅迫観念はついて回るよ。 月花 印象的だった話はね、犬が夜吠えるのが気になっちゃって、ノイローゼになっちゃう男の話。 浜崎 犬が吠える? 月花 うん。主人公の男のマンションの袂に公園があってね、夜になると愛犬家達が犬を連れて集まってくるんだって。 飼い主同士はお喋りに興じて、犬同士は遊び回ってるっていう、よくある風景ね。 その声が気になっちゃって、男が愛犬家を殺すまで、の話。 浜崎 はいはいはい。 月花 始めはね、犬を殺す事を考えるんだよ。でも、結局は飼い主を殺しちゃう。 んで、その男さぁ、犬連れて帰っちゃうんだよー。 浜崎 それって謎だなぁ。なんかオチが無いよね。 月花 まぁね。 浜崎 でも、所謂ハリウッド映画的なオチなんて、実際の人生においてはそうそう無い訳だから、 オチが無い事ってのがリアルなのかもな。 月花 だぁね。 浜崎 これで良かったんだ、って思った瞬間、もう次の問題ないし物語がはじまってしまう、 その連続で人生って進んでくような感じじゃない。 月花 殺したいって、思う時ある? 浜崎 俺は全然思わないと思うけど・・・?「思うけど」って言い方しか出来ないけどね(笑) 月花 あはは 浜崎 解らないからさー、実際。自分が何をしでかすのか、なんて事は。 月花 またね、考えたんだけど、案外「自分が何をしでかすかは解らないし、殺人とか犯罪を 起こす事があり得ないとは言い切れない」って思ってる人より、「自分はあり得ない」って思ってる 若しくは、そんな事考えもしないような人の方が、実際やっちゃったりすんじゃないかな・・・ なんて。。。「つい」とか「ふと」ってやつね。 浜崎 だと思うね。要素や可能性は誰しも持っているだろうし。 そういえば、俺、最近思った事があって・・・ 月花 うん、なぁに? 浜崎 何故人は、主に男は、なんだけど、チャックを閉め忘れてしまうのかっていう。 月花 ・・・・・・なんで?(笑) 浜崎 もう絶対にさぁ、忘れたくない事なんです。 月花 うん(笑) 浜崎 基本的にはね。 月花 ははははははは・・・前からパンチラ、だもんね。 浜崎 そうそう。なんか情けないしさぁ。 月花 なに?よく忘れるの?本人的には。 浜崎 よく、じゃないけど、数年に一回くらいはあるわけ。 とか、それに近いような事って一杯あるじゃない?「なんで私こんな事やってしまうんだろう?」ってのが。 月花 あるねぇ。 浜崎 でね、俺思うに・・・ちょっとまた話飛んじゃうんだけど、コンピューターってずっと進化し続けてさ、 今15万円くらい出せば、もうスゴイ超スーパーな物が手に入る訳だ。 月花 そだね。 浜崎 でもさ、コンピューターの目標って「完璧な事」だったりするでしょ。 月花 うん。 浜崎 これは自分的な考えだけどさ、人間だと出来ない事をね、コンピューターならやってくれるじゃん。 計算も検索も、完璧に。 月花 楽チンだし早いよね。非常に便利くん。 浜崎 だけど、アレ作ってるのは人間でしょ。人間ってバグるものじゃないか。 例えばチャックを閉め忘れたりするっていう、それなんだけど。 月花 バグ、ね(笑) 浜崎 チャックを閉め忘れない人類なんて、想像つかないよ。 ・・・たぶん、永遠にみんな閉め忘れ続けるんじゃないかなぁ。。。 ひょっとしたら、忘れる事が無いようなズボンが開発されるかもしれない。 でも、「忘れてしまう性質」っていうのが 基本にあるからこそ、そういうズボンを開発するんであって、性分に関しては変わってないわけじゃん。 月花 そだね。絶対、他のこと忘れるね。 浜崎 だから、人が作ってる以上ね、コンピューターってのも完璧にはなり得ないんじゃないかって思う。 人間を創った神様が居たとするならば、どうしてこんなアクシデントを起こすような、 完璧でない生物を造ったのかってのが謎だよ。 月花 神様が人間を創る段階でバグったんじゃない?(笑) 浜崎 でも、その「つい忘れてしまった」って事によって、人生大きく変わっちゃったりするじゃん。 それって仕方ない事でもあるのに、なんだか悪みたいでさ。 月花 「うっかり」は時々仕方ないのにね(笑) 浜崎 そう、うっかり。僕たちの中に、いつも理想はあるわけ。「こんな人間だったら良いな」ってね。 そこで「どうやったら」例えばまた(笑)「チャックを閉め忘れない人間で在る」事が 出来るのかって努力をする為にはさ、一旦「仕方ない事」であるって事を認めてしまわないと。 月花 初めから完璧はあり得ない、って事ね。 浜崎 戦争もしかりさ、人間同士なんだから、仕方ない事って沢山あるよね。 月花 「うっかり」と「うっかり」がぶつかって起こった事や、「なんとなく」と「ふとした」偶然が 重なって起こった事が世の中のニュースを作ってるわけじゃん。 まぁ、意図的な事も多少はあるんだろうけど。そんな世界に、怒ったり嘆いたりしたって、仕方ない。 ・・・だってさ、それがまたバグに繋がってしまうのよね。 こういう言い方は非常に無責任で、非人道的なのかもしれないけれどさ。 浜崎 だから「戦争をしないようなパンツ」を作るしかないわけで・・・ 月花 ぶはははは、マジかよ〜 浜崎 男子便所って、飛沫がこう、飛び散ってるじゃない。 あれもさ、どうしてこんなチンチン造ったかなって話で・・・なんで的がズレちゃうかなって。 月花 そんなの、女も飛び散ってる時あるよ。 浜崎 うーん、俺はその辺はよくわからんが、まぁ、みんな間違っちゃうと困っちゃってる訳じゃん。 こんだけ困ってても、治んないんだから、色んなもんが治んなくて当然だよね。 チンコ鍛えろとか、凄い練習したりとか、そういう問題じゃない。 月花 添え木付きパンツとか? 浜崎 いや、それでも無理だと思うよ。もっと・・・その、なんて言うか・・・(笑) 行き先の見えない時がありますからねぇ。 月花 ぶわはははは、そりゃしょうがないね。 浜崎 だから、絶対外さないトイレを作るか・・・ 月花 (股間から手で筒の形を前に突き出しつつ)こーいうカタチ? 浜崎 とかね。まぁ、人類はそういう風にしか成長出来ないんじゃないかと思うわけですよ。 月花 それって、進歩じゃなくて退化なんじゃないの?狙う努力を止めるんでしょ? 浜崎 開き直るっていう変化ではあるだろ。どうせこぼすんだから、仕方ないって。 月花 ふーん、どちらとも言えますな。ときに、チャックはよくやるの?(笑) 浜崎 いや、この前ね、久しぶりに閉め忘れたってのがあって。開いちゃうのもあるじゃないか、Gパンで。 月花 ある。ローライズとかね。 浜崎 で、「あれ?俺はこの事について一生懸命やってきたはずなのに!!!」って思ったの。 月花 チャックについて(爆) ・・・うちの弟はノーパンだから、閉め忘れないみたいよ。 浜崎 うーん、緊張感の問題かねぇ。 月花 たぶんね。だって、ノーパンで閉め忘れたら出ちゃうじゃん。マズいっしょ。 浜崎 いやぁ、やってると思うね。たぶん、それでも時々。 月花 やってっかなぁ、今度聞いてみよっと。 浜崎 全然無いってことは無いでしょ。しかし何でノーパン?逆に、何でパンツ履くのって話になりそうだけど。 月花 男物のパンツに、すんごいイカしたやつが無いからだって言ってたよ。 浜崎 じゃあ、男は何でパンツを履くのかねぇ? 月花 パンツ?何で履いてるの? 浜崎 ・・・・・・わからん(笑)そーいう解らない事って、実は一杯あるんだよね。 月花 スリコミか。 浜崎 そう。考えないでやってる事は一杯あるよ。レールに乗っかっちゃってる感じがね。 月花 そうねぇ・・・。レズビアンやホモセクシャルを何処かで否定するような風潮とか、 まぁ所謂「変態」と呼ばれる行為全般においても、統計の下にあるスリコミ的意識があると言えるんじゃない? ・・・極端な例だけど。 浜崎 あぁ、なるほど。でもその辺は、最近そうでもなくなってきたんじゃない? やっぱ、昔と違って社会通念は薄らいでるように感じる。 月花 薄らいで尚、だと思うよ〜。。。 ・・・まぁ、それが無くなるべきだとも思ってないけど、スリコミと文化と常識の境も曖昧だからさ。 浜崎 それは非常に難しい問題だね。 月花 理由の無い行動も、仕方ない事柄も、うっかりも、曖昧さも、人たる由縁さね。 浜崎 俺の場合、歌をどうしても歌いたいって病気なのかもしれないし、これは一種の脅迫観念と言えるかもしれない。 オマエにだってあるわけじゃん、病気が。 月花 病気かぁ。。。へへへ。 浜崎 殺人者の衝動を病気だとするなら、変態行為だって病気、恋愛で自分を見失うのも病気、 その「病気」の要素は誰にでもあって、そのポイントが社会的か社会的じゃないかって事は、もう幸運、 不運の違いみたいな差しかないんじゃないかって気がしてくるよ。 持って生まれた、或いは無意識のうちに構築された要素は、「うっかり」みたいなもんだろ。 ただ、曖昧な社会になり、社会通念が薄らぐ事によって、抑制されていた何かが緩んで、病気の幅が 広がったり悪化したりはしたんじゃないかな。 月花 ついうっかり、人を殺しちゃったり? 浜崎 うん。「真面目に生きましょう」っていう言葉は、実のところ人間は「悪いことをしてしまう」もの ・・・だからって思ってなかったら出ないものじゃん。 誰もうっかり殺したりしないって思ってたら、法律とか要らないよね。 規制を敷くのと、弛めるのは、匙加減が微妙なんだなぁ。 ・・・ところで、ぺプシおかわり! 月花 まぁ飲みなよって、酒じゃないんだけどね(笑) 浜崎 この間さ、ドフトエフスキーの「カラマアゾフの兄弟」っつーのを読んでたら、 まさにその事について書いてあったんだけど・・・ やっぱり、人ってのは「飯を食いたい」のか、 飯が食えなくっても良いから「自由が欲しい」のか、その二者択一の時にどっちを選ぶのか、と。 月花 ハイハイ。 浜崎 殆どの人がメシを選ぶと思うんだ。自由を選ぶのは、やっぱ大変な事だもん。 自由自由って人間は言うけど、一体自由の根本は何処にあったんだっけ?って思うじゃん。 月花 その矛盾についてはね・・・(苦笑) 浜崎 本当に楽しむ為には、努力が必要じゃないか。 月花 勿論。必要だよ。 それは常に表裏一体なもんだ。精神的自由と物質的自由の両立ってのは在り得るのかね? む〜ずかしいんじゃないの?どっちの自由を選択するのかは個人の問題だけど。 浜崎 問題はさ、今こうやって話してる僕らは果たしてどっちを選んでいるのかって事なんだが・・・ ・・・・・・・・・・・・・・どっちかって言うとさ、メシ選んじゃってるよね。 月花 選びまくってるね(笑) 浜崎 メシの方が美味しいじゃん、とかさ(笑) だから、こんな議論出来る立場じゃないのかもしんないね(笑) 月花 あはははは・・・だねー!なんなんだ一体(笑) 浜崎 まぁいいんだけどさ(笑) 月花 話かわるけど、ダンテの「神曲」は?七つの大罪。 浜崎 人の心に潜むものについて? 月花 私は、七つの大罪なんかは誰もが犯していると思うんだけど。 浜崎 或る意味、聖書はスゴイ本だからな。究極の哲学書っていうか。 月花 イソップ物語とかアンデルセン童話もスゴイよね。善と悪だって表裏一体だから、裏返れば悪は善だもの。 浜崎 「デビルマン」の世界だね。世界はぐるぐるしてるわけだ。 月花 どっちが表でどっちが裏かって、そんなのリバーシブルに決まってるじゃん。 だけど誰しも、自分が立ってる場所を表として見るから、裏の正義が悪に見えちゃうだけ。 浜崎 うんうんうん。 月花 仕方ないっすなー。 浜崎 あぁ、ちっぽけだなぁ。なんかなぁ。 月花 私達もね。 浜崎 そうだなぁ。。。 後日、神曲を読み返した。 浜崎貴司の声が、ラジオから聴こえる。「しあわせであるように」 浜崎貴司HPは、http://hamazaki.org/だよ♪ |